強い鎮痛作用がある一方、依存性や副作用による死亡事例も多いオピオイド鎮痛剤。
それに対し、大麻は依存性や副作用のリスクが少なく痛みの緩和ケアができるということで、オピオイド鎮痛剤の代替薬としても注目されています。
今回は医療大麻とオピオイド鎮痛剤の効果を比較しつつ、両者を詳しくご説明していきます。
オピオイド系鎮痛剤とは?

オピオイド系鎮痛剤とは末梢神経や中枢神経に存在するオピオイド受容体に結合し、モルヒネと同様、あるいは類似する働きをする薬です。
植物由来のオピオイド鎮痛剤は麻薬品に分類されます。また、化合物の半合成・合成で生成されるオピオイドは非麻薬性オピオイドと呼ばれています。
手術中、手術後、外傷による痛み、分娩時、がんによる痛みなどに用いられることが多いですが、下痢、便秘、嘔吐、のほか、息苦しさや睡眠障害などのひどい副作用もみられます。
また、依存性が強いことでも有名で、アメリカでは一時期オピオイド系鎮痛剤の処方率が急増したことで死亡事故が多発し、薬自体が問題視されるようになりました。
医療大麻だけでなく、嗜好目的の大麻も解禁された州が多いアメリカでは、現在オピオイド鎮痛剤と医療大麻の並行投与もしくは置換えが進められているのです。
大麻とオピオイド鎮痛剤を比較
下記では医療大麻とオピオイド鎮痛剤をさまざまな角度から比較してみました。
医療大麻 | オピオイド鎮痛剤 | |
効果の経路 | 体内に存在する受容体CB1とCB2に結びついて身体に効果をもたらす。 | 体内に存在するオピオイド受容体に結びついて身体に効果をもたらす |
主な成分 | CBDをメインとする大麻由来のカンナビノイド。 THCも含まれることがある。 |
大麻由来のオピオイドと化合物質から生成されるオピオイドの2種類がある。 |
主な作用や効果 | 鎮痛効果以外にも以下のような効果が期待できる。 ・抗炎症作用・抗酸化作用・リラックス作用・ストレス緩和作用 ・睡眠障害の改善・抗うつ作用・抗がん/抗腫瘍作用 |
主に鎮痛作用 |
副作用 | ほとんどないといわれているが、まれに吐き気や不快感などの 症状が現れる場合もある。 |
嘔吐、下痢、便秘、腹痛、睡眠障害、不快感、気分の落ち込みなどがみられる |
依存性 | THCによる精神依存がけ懸念されるものの、身体的依存はほぼないと いわれている。 |
ドーパミンの急増を引き起こし、高い依存性があるとされている。 |
大麻とオピオイド鎮痛剤の有効的な使い方

オピオイド鎮痛剤と大麻の鎮痛作用の面だけを比較すると、オピオイド鎮痛剤の方が高い鎮静作用があるとされています。
ただし、両者を少量ずつ摂取した場合、オピオイド単体よりもより高い効果が期待できることが臨床実験で発見されたそう。
また、アメリカでは大麻利用が解禁された州において、オピオイド鎮痛剤による死亡件数が20%減少したという報告もあります。
大麻に含まれるCBDは依存症の改善に役立つ効果も期待できることから、今後痛みの治療やペインクリニックでも、オピオイド鎮痛剤の減量や大麻との並行または置換え治療が増えていく見込みです。
まとめ
今回は強力な鎮静作用のあるオピオイド鎮痛剤と大麻について詳しくお伝えしました。
オピオイド鎮痛剤よりも体への負担が少なく、副作用もない大麻は今後多くの痛み治療で取り上げられていくでしょう。
参考記事:
https://www.jspc.gr.jp/igakusei/igakusei_keyopioid.html
https://wellness.shionogi.co.jp/tsurasa/treatment/opioid.html